2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧
(誰がブタネコだって〜?) 「以前にもプレーテ・ロッソが失踪した事があるの。アンに話したよね?それはアントネッラがピエタに来た時だった。結局先生は2年間ピエタに戻ってこなかった。でも戻ってきてからは、もの凄い勢いで協奏曲を書いていたわ。それ…
(ウツボみたいと噂しているのは誰?) 「キャラはヴィヴァルディ先生が失踪する事を知っていたのではないの?」 その頃のキアーラは、アンナの洞察力と会話における単刀直入な切り口には慣れていた。というよりも、そんなアンナと話をする事が楽しみになっ…
(誰が私を馬だと噂した〜?) アンナは思った。 (ヴィヴァルディ先生の疾走癖は今に始まった事ではなかったのだわ。) アンナがピエタに来て約1ケ月が経っていた。この頃ピエタでは、ある噂が広まっていた。 その内容を要約するとこうだ。 『4年前、ヴィ…
(オーデション参加2名) キアーラは自分のへやにアントネッラを呼んで、高音部管楽器をするように伝えた。そしてオーボエを集中して練習するように彼女に課した。アントネッラは素直に喜んだ。その傲慢で無神経な素直さに、キアーラは嫌悪した。 次にパオ…
(もう〜真面目にしてよ〜) オーデションでは、パオラとアントネッラの二人にオーボエ、フルート、バッソンの全てを演奏するように課せられた。それをピエタ合奏団の全員とヴィヴァルディの代わりとして合唱長が審査員として立ち会った。 パオラの演奏はど…
(お前がアントネッラ?) パオラがピエタにきて5年が経ち15歳になっていた。初めて習った管楽器オーボエはピエタで一番の腕前になっていた。それと同時にフルートもかなり上達していたし、身体も大きくなったからと始めたバッソンも、めきめきと腕を上げ…
(どこでもこんなもんじゃ〜) 「ねえキャラ、なぜ私が一度もヴァイオリンを持った事も弾いた事もなかったのに、私がこれだけ弾けるという事がわかったの?」 「それはアンの指よ。私がアンへの歓迎で弾いた協奏曲【春】を、あなたは私と同じように弾いてい…
(これも私の実力?) (ああ、これはヴァイオリン協奏曲【冬】だわ。) キアーラは、アンナの音楽性にすっかり心を乱されてしまった。 (緊張した重たいテンポの刻みは、まさに運命の時間のよう。そして突然に強く現れる激しいヴァイオリンの動きは精神の高…
(私の実力はこんなもんよ) # 「さあ約束だったわよ。今日はアンのヴァイオリンをじっくりと聴かせて。」 キアーラはピエタ合奏団の練習終了後、アンナを呼びとめてそう言った。 「ここにヴァイオリンがあるわ。あまりよい状態ではないけれど、ストラドだ…
(謝肉祭は被り物がつきもの?) # ヴェネチアの謝肉祭は他国でも有名な祭りだった。道化姿の白い顔や黒い顔に変身した人々が街中のいたる所に溢れていた。街中が独特で異様な雰囲気に包まれていた。そして雑然たる活気に満ちていた。別に彼らが踊り狂った…
(私たちはとっても仲良しです) # アンナの耳に、パオラのすすり泣きが聞こえた。それに大小多くの材木の転がる音、擦れる音、叩く音、いろいろな音が喧騒な木霊となって響いている。それに職人たちの大きな話声が混ざっていた。時折怒号も聞こえる。それ…
(ゴンドラに乗ったつもり) 「パオラさん、あいつから聞いただろうが俺はもうすぐ結婚する。相手は、ゴンドラ漕ぎの先輩の妹だ。23歳で転職してゴンドラの世界へ入っていった俺の面倒を、先輩はよくみてくれた。先輩は20年以上漕いでいるゴンドラのノウ…
(ゴンドラに乗っている気分で) 「俺の心境が少しずつ変わってきたのは、パオラさん、君がピエタに来てからだと思う。あいつはパオラさんの話をよくしていたよ。妹のように可愛いとも言っていた。俺はちょっと嫉妬したね。誤解しないでおくれ。君にではなく…
(これはゴンドラじゃあないよ) アントニオは、キアーラがいい仲間と暮らしている事が嬉しかった。その彼女を諦めなくてはならなかった葛藤と後悔。そして、これから結婚する女性への誠実さと不実への自問自答。それらの思いが、複雑なラグーナの潮の流れの…
(ゴンドラに乗って渡りたい・・・) パオラとアントニオは、岸から離れたゴンドラの上にいた。 アントニオにとっては、船頭仲間から冷やかされない為でもあったが、それよりもパオラと会うやすぐに「キアーラ姉さんの事で、」と言われた瞬間、こうしようと…
(ふて寝しています) 翌朝、パオラは聖マルコ広場の船着場にいた。アントニオに合う為だった。 何百隻ものゴンドラが停泊していたり往来していた。いくら歩きまわれるヴェネチアとはいえ、ゴンドラだって巡っている。しかもパオラはアントニオの顔を知らな…
(昨日はちょっとアップ過ぎました) パオラはキアーラのベットに座って泣いていた。できるだけ声を押し殺して涙をこぼしながら、キアーラが何か言ってくれるまでじっと待った。 キアーラは椅子に座って、すっとうつむいたままだった。パオラは、キアーラも…
(ルナピンスキーのますますのアップです) その日、キアーラはピエタ合奏団の練習を無断で休んだ。その日はキアーラがヴァイオリン独奏をする協奏曲の練習日だった。キアーラが練習をさぼるような娘ではない事は、ピエタの誰もがわかっていた。だから皆は、…
(ルナピンスキーのさらなるアップです) # パオラがピエタに来て3年が経ち、13歳になっていた。 パオラはキアーラのお蔭で毎日が充実していた。それはパオラ自身も、日々練習を頑張っていたからでもあった。キアーラの配慮でオーボエからフルートを始め…
(これもルナピンスキーのアップです) 国営造船所は海のない国で育ったアンナを感動させるに、十分な規模と演出を誇っていた。さすがに海運国家ヴェネチアの屋台骨を支えてきた造船所だけの事はある。 多くの人々が、それぞれの作業にとりかかっていた。船…
(ルナピンスキーのアップです) すぐに平静なパオラになった。と、この時のアンナはそう思っていた。 「アン、次に向かうのは国営造船所よ。そこはピエタに近いから、できるだけ寄り道をしながら行きましょう。」 アンナは半日歩きながら、ヴェネチアの街が…
(はあん、アントニオ?) # その時アンナの耳に、聞き覚えのある声が入ってきた。この不快でないテノール・・・ああ、あの声は・・・私をゴンドラでヴェネチアにまで乗せてきてくれた大男だわ。あの時は薄暗かったので、ほとんど顔に覚えはない。でもこの…
(ん?) キアーラはパオラを気遣ってよく部屋を訪ねた。パオラは明るくて、なんでも話す娘だったので、キアーラはパオラが大好きだったのだ。 パオラとキアーラは、たわいもない話でも盛り上がった。娘二人が一番盛り上がれるのは、やはり恋愛の話だった。…
(ん?) ピエタの孤児院は、もちろん恋愛禁止ではなかった。それどころか、恋愛を奨励していた。恋愛の先にある結婚、それこそ孤児としてピエタに預けられた娘たちの『もっとも幸せなかたち』なのだから。 実際、席から顔を見る事のできなかった『ナイチン…
(ん?) アントニオは25歳でヴェネチアを巡るゴンドラの船頭になった。 キアーラはそれを自分の事のように喜んだ。5歳の頃からピエタにいたキアーラは、外の世界を知らなかった。だからこそ恋人であるアントニオの人生に、自分が精神的にでも関われるの…
(ルナの片思いの恋人モナカです❤) 16歳になったアントニオは、ピエタを出ていかなくてはならなかった。 声のよかったアントニオは、ヴェネチア歌劇場のテノール歌手になる夢があった。それに教会から推薦状がもらえる事になっていた。ところが、突然にそ…