実習生がやってきた(1)
ある日、男性看護師が俺に声を掛けてきた。「今度、うちの病院に実習生が10
人ばかり来るので、そのうち1人の担当を受けてくれませんか?」つまり1人の
実習生が俺の担当になり、俺と話をしたり病院での生活を見せやってくれ、とのこ
とだった。「俺でいいんですか?ろくな被験者ではないですよ。」と言ったが、普
段通り過ごしてくれたらいいと看護師が言うので、俺は渋々ながら引き受けた。単
調な病院生活に飽き飽きしていた俺はちょっとした刺激でも欲しかった頃だった。
ある週明けの朝礼時、実習生たちがやってきた。10に程が横一列に並んでいた。
将来の看護師たちだ。男1人にあとは女子。全員大学生だから当然若い。こちらは
ほとんどが男で年寄りばかりだ。女性も少しはいるが、シーラカンスを相手にして
いる乙姫様のような方々だ。そこへピチピチッと若くて華やかな雰囲気を病院内へ
もたらしてくれたのだ。おじいちゃまたちも竜宮城へ来たような気分だろう。俺は
その貴重な1人の実習生の担当になったのだ。正直、この雰囲気をもっと幸せに感
じてくれるであろうおじいちゃまと代ってあげたかった。俺はだんだんと面倒臭く
なってきたが、ともかく実習生たちとの時間が始まった。
*これはフィクションです。