アンナの実力(3)


(どこでもこんなもんじゃ〜)
「ねえキャラ、なぜ私が一度もヴァイオリンを持った事も弾いた事もなかったのに、私がこれだけ弾けるという事がわかったの?」
「それはアンの指よ。私がアンへの歓迎で弾いた協奏曲【春】を、あなたは私と同じように弾いていたわ、指だけでね。私はヴァイオリンを弾きながら、ずっとアンの指を見ていたのよ。だって、演奏中ずっと動いているのだもの。しかも私と全く同時に動いていたわ。だからあなたが相当に上手に弾けるのだってわかったのよ。
 それより昨日のデートは楽しかった?」
「はい、パオがいろいろな所へ連れて行ってくれたし、そこでとっても楽しい話をしてくれたのでヴェネチアの街が好きになりました。それにパオの事も。」
「それはよかったわ。ではそこで私の話も聞いたのでしょう。ならよかったわ。アンの私への質問の答えは、ノーよ。」
 アンナは戸惑った。キアーラへの質問?確か恋人がいるのか?と訊いたはず。昨日パオは、アントニオは結婚したが、その後もキアーラはアントニオと付き合っているような事を言っていた・・・はずだが・・・
「その顔だと、パオは全部をあなたに話していなかったようね。パオはアントネッラの話はしなかったのかしら?」
 アントネッラ?・・・アンナは沈黙した。
「そう、やっぱりしていないんだ。パオらしいわね。だから私はパオが好きなのよ。本当に妹のように愛しているの。では今度は、なぜ私がパオを好きになったのかアンに話してあげるわ。それはアントネッラも関係している事だから。」