2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

キアーラの恋人アントニオ(1)

(ルナの恋人、ライヴィッチです❤) キアーラは、5歳の時に孤児としてピエタに入った。そして先輩のお姉さまからヴァイオリンの手ほどきを受けた。そしてキアーラが10歳の時、ヴィヴァルディがピエタにきた。その後、彼女はピエタを代表するヴァイオリン…

ピエタの男の子(1)

(僕も一応男の子だよ〜) ピエタの孤児院は、もともと海運国家ヴェネチアの『負の遺産』だった。負とは、海という場所に命を預ければ命の元本保証すら無いという負(リスク)であり、遺産とは、その為の保険が存在したという事だ。だとすればヴェネチアは、…

パオラがピエタに来た頃(3)

(モナチンは山で捨てられて、山田家に来たのだ) 次の日、キアーラがあの眩しい笑顔でパオラの所へやってきた。そして言った。 「パオ、あなたは今日からオーボエをしなさい。オーボエのお姉さまに、あなたの事を話しておいたから。今からそのお姉さまがオ…

パオラがピエタに来た頃(2)

(ライヴィッチは売れ残って山田家に来ました) パオラはヴァイオリンが好きになれなかった。その頃のピエタでは、合奏団は弦楽合奏が中心だったので、皆がヴァイオリンやチェロなどの弦楽器を練習する事になっていた。オーボエやバッソン(ファゴット)は、…

パオラがピエタに来た頃(1)

(ルナが山田家に来た頃のふてくされた顔です) パオラがピエタに来たのは彼女が10歳の時だった。その頃のピエタは、毎週のように行われる演奏会で、とても活況があった。ヴァイオリン独奏はもちろん、超人気者のキアーラだった。彼女は20歳になっていた…

ヴェネチアの青い空と海(2)

(天気が悪くてもお散歩は楽しいわ❤) 聖マルコ広場に接した海岸は、たくさんのゴンドラという舟ががひしめきあって真っ黒だった。少し沖に目をやると、青いキャンパスに黒い小さな斑点が付いているようであり、さらに沖ではもっと青い海が広がっていた。無…

ヴェネチアの青い空と海(1)

(やっぱりお散歩は楽しいぞ) 「アン、今日はず〜と、あなたと一緒に歩き巡るわよ。私をアン専用の観光ガイドだと思ってよね。」 「ええ、私もパオとこうして歩いているのが嬉しいわ。」 「とにかくまずは、聖マルコ広場に向かってみましょう。 ヴェネチア…

キアーラの部屋で

(ここは私の部屋よ❤) # キアーラの話が終わると、パオラが言った。 「ふ〜ん、そんな歴史があったのかあ。私はキャラがいた時にここへ来られて本当に運が良かった〜。アンも頑張りなよ、キャラは本当にいい姉さんだからさ。でもアン、キャラたちの活躍で…

キアーラの部屋を出て

(ここはライヴィッチの部屋なのだニャ〜) その時パオラは、一つの答えを見出していたようだ。アンナとパオラがキアーラの部屋を出た時だった。パオラがアンナに言った。 「アン、あなたの質問は、うまくキャラにはぐらかされちゃったわね。 明日は私たちお…

プレーテ・ロッソ、ヴィヴァルディ(2)

(もしかしてアントニオ・ヴィヴァルディ?) 当時、孤児院であったピエタを支えていたのは、国や貴族からの多大なる寄付や援助であった。また、ピエタの『合唱の娘たち』や『合奏の娘たち』の演奏会も重要な収入源になっていた。ヴィヴァルディがピエタに来…

プレーテ・ロッソ、ヴィヴァルディ(1)

(私は赤い服よ) ヴィヴァルディは、いつの間にかプレーテ・ロッソ(赤髪の司祭)というあだ名が付けられていた。はじめは誹謗中傷の意味も込められていた。それはヴィヴァルディの作品や、ピエタでのやり方に否定的な『合奏の娘たち』、特に年配の娘たちら…

ヴィヴァルディ、ピエタに現れる(4)

(ライヴィッチです) キアーラが写譜を頑張っていた夜、ほとんどの先輩たちはおしゃべりに花を咲かせていた。先輩といっても、学校のように3年上級なんてレベルではない。平均年齢が30とも40とも言われているピエタの『合奏の娘たち』だ。キアーラは、…

ヴィヴァルディ、ピエタに現れる(3)

(何が現れたのだ〜) キアーラはヴィヴァルディの創ったトリオソナタを一生懸命練習した。その結果ヴィヴァルディが言ったとおり、キアーラのヴァイオリンの技術は飛躍的に上達した。 一年後のキアーラは、12曲もあったトリオソナタを、全て演奏できるよ…

ヴィヴァルディ、ピエタに現れる(3)

ヴィヴァルディ、ピエタに現れる(2)

(ルナピンスキーひっくり返る) ヴィヴァルディはすぐに曲を創作していった。まず、ヴァイオリン2本と伴奏楽器チェンバロにチェロを伴った楽曲を作っては次々と持ってきた。そして皆に言った。 「これはトリオソナタだ。この曲は君たちの大事な練習曲にな…

ヴィヴァルディ、ピエタに現れる(1)

(ルナ、炬燵から現れる) # 1703年、キアーラがまだ10歳の時だった。 その日、ガスパリーニ合唱長に伴われて、25歳の彼がピエタ慈善院ににやってきた。 そしてピエタ合奏団は彼に歓迎の音楽を演奏した。曲はコレルリの合奏協奏曲だった。 コレルリ…

ヴェネチアの娘たち(9)

(こんばんわ、おじゃましますニャー) ノックをするとキアーラが返事をした。中へ入ると、そこにもう一人若い女性がいた。 「アン、いらっしゃい。彼女が誰だかわかるわよね。今晩アンが来るからプレーテ・ロッソの話をするんだってパオラに話したら『私も…

ヴェネチアの娘たち(8)

(山田家の娘です) アンナはまだ旅の疲れが残っていた。しかも今日は、素晴らしいピエタの演奏をずっと聴いていたのだ。まだ感動と興奮の余韻が続いており、耳はかなり疲れていた。しかしそれを上回る程の好奇心が、兄フランツとおしゃべりした後のように、…

ヴェネチアの娘たち(7)

(私だって娘なのよ❤) ピエタ合奏団はヴァイオリン協奏曲【夏】によって再開された。 しばらくすると、さっき話をしたアントネッラがフルートを持って入ってきた。 あとオーボエを持った10代の可愛らしい女の子と、背丈の半分ほどもある長い筒のような楽…

ヴェネチアの娘たち(6)

(私はどれでしょうか・・・ムン) 休憩に入るとすぐに、キアーラが笑顔でアンナの所へやってきて話をした。 「アンナ、どうだった?いい曲でしょう。 私はこの曲が大好きなの。だってとっても明るい曲調だし鳥の鳴く描写なんかとっても可愛くて楽しいの。と…

ヴェネチアの娘たち(5)

(昔こんな娘もいました・・・) 始めて見る練習はヴィヴァルディの有名な協奏曲【春】だった。これはピエタ合奏団がアンナを歓迎する意味もあった。【春】はヴァイオリン協奏曲の中の一曲で、ヴァイオリン独奏はキアーラが担当した。 そこでアンナは、キア…

ヴェネチアの娘たち(4)

(ライヴィッチとおでかけよ❤) ピエタの暗い廊下にカツッ、カツッと響く音がする。アンナはマエストロ・ピエタに伴われて一緒に歩いている。するとその靴音に少しずつ華やいだ声がこだましてきた。アンナは経験した事のない雰囲気に心躍った。 マエストロが…

ヴェネチアの娘たち(3)

(どんな所かにゃ〜) 「私はピエタ慈善院の合唱長、ピエトロ・ダッロリオです。マエストロ・ピエタと皆が呼んでくれています。 ここピエタでの演奏会は大変人気があります。当然、合唱団や合奏団の入団希望者も大勢います。もちろん貴女には『合唱、合奏の…

ヴェネチアの娘たち(2)

(私もちょっと手紙を・・・) フランツからの手紙が、お迎えの馬車で届けられたのは二日後だった。その早急さが、自分が見た事の重大さを物語っていた。 『アンヌ、お前は今からヴェネチア共和国へ行くの だ。そこには教会の孤児院がいくつかある。その中 …

第1章 ヴェネチアの娘たち (1)

(もちろん、私も娘です。) 第1章 ヴェネチアの娘たち 6歳上の兄フランツを、アンヌは心から愛していた。アンヌには三人の兄と一人の姉がいた。その中で年齢が一番近いフランツに、アンヌは阿仁を慕う以上の感情を持っていた。 アンヌが9歳の頃、上の兄…

調和の霊感 

(これがラグーナ?) 調和の霊感 前奏曲 漆黒の闇の中で身体が左右に揺れている。 決して心地のいい揺れではないが、三ケ月以上も毎日、馬車に揺られ続けた華奢な身体には、この程度の揺れは、まるで揺りかごの中の包まれた赤ん坊のようだった。 揺りかごに…