ヴェネチアの娘たち(8)


(山田家の娘です)
 アンナはまだ旅の疲れが残っていた。しかも今日は、素晴らしいピエタの演奏をずっと聴いていたのだ。まだ感動と興奮の余韻が続いており、耳はかなり疲れていた。しかしそれを上回る程の好奇心が、兄フランツとおしゃべりした後のように、アンナを元気にさせてくれた。フランツ以上の好奇心の相手とは?それはもちろんプレーテ・ロッソ、ヴィヴァルディ先生の事だった。アンナはその好奇心をキアーラの部屋で満たすために、ワクワクしながら自分の部屋をそっと抜け出した。それは秘密を持った感受性の強い少女のような振る舞いだった。