2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

院内ブラブラ歩き(5)

院内3階の端から端まで歩いてもたいした距離にはならない。俺がゆっくり歩き ながら見物しても10分と掛からなかった。それでも今日はいろいろな経験をした せいか、身体より精神的なダメージの方が遙かに大きかった。B棟のベランダに出 て外の空気を吸っ…

院内ブラブラ歩き(4)

看護師たちはみんな鍵を腰からぶら下げていた。ナース・ステーションの出入り から診療室、処置室や階段に通じるドア、エレベーター、それに給食用のエレベー ターや面会室などまで至る所が施錠してあった。それを看護師たちが一々合い鍵で 開閉していた。一…

院内ブラブラ歩き(3)

院内をブラブラしているのは俺だけではないのだ。年配のおじいちゃんは小綺麗 な洋服を着込んで看護師に言った。「今から家へ帰らんにゃならん。ちょっと鍵を 開けてくれ。」おじいちゃんの孫娘のような歳の、その看護師は軽くあしらう。 「はいはい、家の人…

院内ブラブラ歩き(2)

テレビを見て楽しそうではなかった理由はすぐにわかった。画面は明らかにNHK だとわかった。院内ではNHK限定で活動時間外のみ映し出されるようだ。つまり、 みんなが休んでいる昼の時間はNHKもやる気がないようだ。テレビはナース・ス テーションからよく見…

院内ブラブラ歩き(1)

俺は、院内の様子を見ながらブラブラと散策した。とはいえ自由に歩けるのは、 自分のいる3階の廊下や、洗面所、トイレ、それにデイ・ルームという大きなホー ルのような共有スペースだけだった。 デイ・ルームは階の中心に位置し、ナースステーションに面し…

噂のピンク部屋(2)

俺は素直に騒々しい方へ行ってみる事にした。まあ言われなくても好奇心豊かな 俺は行っただろう。部屋を出るついでに窓を開けてみた。デブの言ったとおり窓は 2センチ以上は開かなかった。部屋の出入り口の所のベッドでブチが寝ていた。 俺は彼の方をチラッ…

噂のピンク部屋(1)

俺の向かいのベッドで横になっていたデブが半身を起こしてこっちを見ていた。 「ここは刑務所みたいなものだ。いや刑務所の方がまだマシかもな。」 俺は刑務所の中は知らないが、この部屋は病院とは思えない程に寒かった。 ベッドには薄い布団に2枚の安げな…

こうして俺は豚になった(2)

俺はまだ動揺していた。だって仕方がない。俺は豚になってしまったのだ。 俺は心の中で何度も呟いた。(なんで豚なんだ。なんで豚?なんだ?) 俺は我に返って冊子『入院のしおり』を見た。 (なんだ・・・これは?)しばらく俺の口が閉じることは無かった。…

こうして俺は豚になった(1)

俺は鏡の前で呆然と立ち竦んだ。頭の中の回路が目まぐるしく混乱していた。 こんな時の対応力が僕は弱い。いつもなら動かず静かに思案する。だが今は 対応力なんて関係ない。突然、俺の顔が豚になっていたのだ。誰だって狼狽する だろう。俺は気持ちを少しで…