噂のピンク部屋(2)

 俺は素直に騒々しい方へ行ってみる事にした。まあ言われなくても好奇心豊かな

俺は行っただろう。部屋を出るついでに窓を開けてみた。デブの言ったとおり窓は

2センチ以上は開かなかった。部屋の出入り口の所のベッドでブチが寝ていた。

俺は彼の方をチラッと見た。彼もまた寝てはいなかった。横になって本を読んでい

る様だった。彼は俺に言ったのか独り言なのか、わからないような口調でボソッと

言った。「幻覚でも見ているのでしょう。禁断症状ですね。」俺は彼の声を背中で

聞きながら騒々しい方へ向かって歩いた。

 声の主たちは簡単に見つけられた。3人の女性看護師と患者が病室の前で何やら

騒いでいる。いや騒いでいたのは一匹の豚だけだった。彼は看護師たちに向かって

必死に訴えていた。

「ほら、そこの枕元にヘビがいるでしょう!わあ、いっぱいいる。」

看護師の1人が涼しい顔で対応している。「大丈夫、ヘビなんていないわよ。」

「いるよ。ほらほら枕の中からいっぱい出てきた。」 俺はドキドキしながら、

廊下で話している2人の看護師を見た。「どうしようか、取りあえず保護室

 連れて行こうかあ。」保護室?どうやらそこが噂のピンク部屋のようだ。こんな

事はきっと日常茶飯事なのだろう俺は今、自分がどこにいるのか改めて実感した。