2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

第二幕第二場(18)

その後は、お店にやって来たいろいろな業者の話で盛り上がった。 『お手拭き』 お手拭き業者がお店に来て、ビニール袋に入った 使い捨てのお手拭きのサンプルを置いていったと言 う赤ハリ先生に、タア子の、 「いくら一つ18円とはいえバカにならないよ。安…

第二幕第二場(17)

ノブタが赤ハリ先生に訊いた。 「先生、アルコールは何を置こうと思っていますか?」 「香菜里屋みたいに四種類のビールを置くつもりはありませんが、二社のメーカーのビールは置きたいし、日本酒も大手メーカーではなく、旨い純米酒を集めてみたいし、焼酎…

第二幕第二場(16)

「これで雑貨はメドがだった訳ね。んで他に必要な物は何かあるの、赤ハリ?」 タア子の質問には答えずに、赤ハリ先生は次の皿をみんなに出しながら言った。 「これは揚げだし豆腐です。近くの商店街から鰹節と豆腐を仕入れました。出汁は鰹節だけではなく昆…

第二幕第二場(15)

「さっき私の友人夫婦がイタリアン・レストランを開業したけど、経営が上手くいかなくなって潰れたっていう話をしたでしょう。今その友人とメールで、レストランにあった調度品や雑貨品はどうなったのか、情報を交換し合っていたの。友人の話では、ご主人が…

第二幕第二場(14)

ノブタが言った。 「弁護士だからさ。例えばこの店を持ち家だとして、この店を経営していたご夫婦が別れるとして財産を均等に分けると仮定するよ。もしご主人がこの店を引き続きやっていくとしても、この店の半分の権利は奥様にあるんだ。これは奥様が店を手…

第二幕第二場(13)

「あの先生、わたくし先程から美味しい物を頂きながら思っていたのですが、みなさんにお出ししているお皿がバラバラなのは、前のお店がそうだったのですか?」神杉さんだ。 「いえいえ、このお店は居抜き物件でしたが、お皿等は全て処分されていました。お皿…

第二幕第二場(12)

コロッケと言っても、その大きさはピンポン玉状をコロッケ型に形成したものだった。男性なら一口、女性なら二口で食べられそうだったが、一口目のサクッとした食感とその後に広がるチーズの香りが絶妙な 一品だった。一同の美味しいとの声に、満足げな赤ハリ…

第二幕第二場(11)

次の皿が出てきた。 「これはきのこのオムレツです。ポルチーニ茸、ブラウンマッシュルームにシメジ茸と舞茸を加え、それに黒トリフのパウダーで香り付けしてから、バターを加えた卵で柔らかく包みました。」 一同、ホ〜ウなる感嘆の声の中で、タア子が吐き…

第二幕第二場(10)

「赤ハリ先生は今日の食材をどこで買ったのですか?」 「その辺のデパートですが、何か?」 「デ、デ、デパート?」声を荒げたのはタア子だった。 「何でデパートなんかで買い物をするの?」 「いけませんか?あそこは少々の物は全て揃いますし、珍しい物も…

第二幕第二場(9)

赤ハリ先生は真面目に答えた。 「そうなのです。調理師免許を取得するには調理師学校へ通うか二年間は調理現場で働かねばならなかったのです。自分にとって時間的に無理な事でした。 イルカさんも冷静に本来の話題に戻った。 「だったらやっぱり原価を考えて…

第二幕第二場(8)

で、今度はノブタが極端な例を持ち出してヒンシュクを買った。 「わかったよ。では響ちゃんにわかりやすく例えましょう。あなたが二十歳になって俺と結婚して、俺があなたに店を持たせてあげたとします。するとあなたは自由に料理を作りお客様にその料理を出…

第二幕第二場(7)

「これは二種のパスタです。カルボナーラとペペロンチーノです。カルボナーラは生クリームを使用し豚バラ肉の塩漬けであるパンチェッタを使っています。」 一同、美味しいという歓声の中で、神杉静江さんが更に感嘆の声をあげた。 「先生、本当に美味しいで…

第二幕第二場(6)

そこへバカな事を言う奴がいた。タメ池ではない。タア子だ。 「この店の名を、多賀子が里のようにくつろげる店という意味を込めて『多賀里屋』っていうのはどう?」 因みにタア子の正式な名前が多賀子だ。 このタコの冗談なのか本気なのかわからないバカな提…

第二幕第二場(5)

「おかしいですか?何か変ですか?」 ・・・・・店内が「う〜ん」というような雰囲気に包まれた。 「なんか凄〜くマニアックな名前で、だからってマニアな人達が集まる様な雰囲気の名前ではないような気がするなあ・・・いっそ、前のお店の名前『香菜里屋』…

第二幕第二場(4)

「という事は、赤ハリ先生も関西の出身ですか?」 唐突なノブタの質問にタメ池が突っ込んだ。 「という事はって、どういう事よ?」 (この娘、やっぱりバカ?) 面倒臭そうにノブタが答えようとする代わりにタア子が答えた。 「アキレスを使ったおでんを出し…

第二幕第二場(3)

「関西以西のおでんは、昆布出汁ではなく牛のスジ肉を使うのですよ。しかもそのスジ肉も食べます。神杉さんは出汁の味でそれを見抜いたのです。ただ先生の言ったアキレスはスジ肉と混同されやすいのだけどちょっと違うのです。スジ肉は肉と肉の間に付いてい…

第二幕第二場(2)

最初に出て来たのは『おでん』だった。 少し大きめの少し深いお皿の中に、大根、こんにゃく、玉子、厚揚げ、つまりおでんの王道達が足湯に浸かって鎮座していた。一同歓声をあげながら各人お箸を手にした。 赤ハリ先生がおでんを語り始めた。 「この味に辿り…

第二幕第二場 開店準備

((8)話で香菜里屋を香奈里屋と記してしまいまし た。香菜里屋が正確な表記です。ごめんなさい。) 第二幕第二場 開店準備 第2回目の赤ハリプロジェクトは赤ハリ先生のお店で平日のお昼に開催された。 赤ハリプロジェクトの主旨が、赤ハリ先生の転職を陰…

ちょっと休憩(香菜里屋のこと)

私には中学時代からの長い付き合いをした親友がいた。彼は精神的に早熟で中学時代は親友というような対等な関係ではなかった。私達はしばしば塾の帰りに公園のブランコに座って将来を語り合った。彼は絶対に小説家になると、そして私は音楽家になると。 その…

第二幕第一場(9)

私とタア子は赤ハリ先生の顔を見た。まんざらでもないような表情だったのでタア子が慌てて言った。 「おいおい赤ハリ、よ〜く考えて決めるんだよ。ここだと絶対に一見の客は来ないよ。その工藤さんとやらの店ならともかく、赤ハリは客を惹き付けるだけの魅力…

第二幕第一場(8)

タア子が即座に訊いた。 「でも、何故前の人はこの店を止めたの?やっぱりこの場所では流行らなかったのではないの?」 「いえ、前のお店はそれなりに流行っていましたよ。」 猪木さんは朗らかにそして懐かしむように話した。 「香奈里屋というお店は随分と…

第二幕第一場(7)

結局私達は、タメ池のお父さんの知り合いという不動産屋に案内してもらって物件を見に行く事にした。不動産屋はベテランの男性がわざわざ赤ハリ先生の家まで会社の車で迎えに来てくれて、みんなを現地へ連れて行ってくれた。勿論タメ池も一緒だった。 車の中…

第二幕第一場(6)

(明けましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いします 小説オペレッタ『赤ハリ先生の居酒屋』も まだまだ続きます。 こちらもどうぞご愛読くださいませ。) 「は〜い、これからはうちが自分で話ま〜す。」と池野響が言って弾丸の如くしゃべ…