第二幕第二場(11)

 次の皿が出てきた。
「これはきのこのオムレツです。ポルチーニ茸、ブラウンマッシュルームにシメジ茸と舞茸を加え、それに黒トリフのパウダーで香り付けしてから、バターを加えた卵で柔らかく包みました。」
 一同、ホ〜ウなる感嘆の声の中で、タア子が吐き捨てるように言った。
「これもデパ地下で揃えた物なんでしょう。玉子なんて一パック200円はするのでしょう?」
 赤ハリ先生は涼しい顔をしてそれを否定した。
「いえいえ、これは有精卵の初卵なので一パック450円です。その玉子を贅沢にも一人分のオムレツに三個使っています。」
「ねえ〜、赤ハリの店ってどこまで高級な居酒屋なの?」
タア子の嫌味で率直な意見にイルカさんが補足した。
「そうねえ、一パック200円はするシメジと舞茸、それにブラウンマッシュルームやポルチーニを加え、一パック450円もする玉子かあ・・・しめて一人前の原価は800円ってとこね。」
それをノブチンがまとめた。
「先程から私が話しているように、作りたい物とそれが売れる値段は違うのよ。だからといって安ければ売れる物でもないの。赤ハリ先生は自分のお店をどんな居酒屋にしたいのかじっくりと考えて、メニューを決めてもう一度練り直せばいいだけよ。同じメニューでも素材と買い出しの場所でぜんぜんコストが変わってくるからね。」
「わかります。魚介類なんか築地の市場に行って仕入れてこようと考えています。市場は信じられない位、安くて新鮮な物が手に入ると聞いたものですから。」
 魚と聞いてイルカさんが黙っていなかった。
「先生、確かに市場の魚は安いけど一尾二尾の為に交通費を掛けてまで買いに行っても仕方がないでしょう。だからと言ってトロ箱で買ってもお店で全部さばけないでしょう?近場の安いお店で必要な量だけ探すのが賢明だと私は思うわ。」
 魚の事ならもう一人、タコも黙っていなかった。
「そうよ、スーパーでも店によっては、同じ魚でも値段が全然違うのよ。市場で箱買いなんて殿様みたいな事言ってないで、地道にこの辺りのいいスーパーや小売店を開拓するべきね。今度、ブラマンと三人でこの辺りを探訪しようよ。」
(あっ、やっぱり私も入っているのかあ!)
「では多賀子さん、お願いしますね。で、これはチーズコロッケです。」
と言いながら赤ハリ先生は四枚目の皿を出した。