2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

第三幕第一場 第六夜(4)

私の予想通り、すかさずタア子が赤ハリ先生の話に怒って言った。 「赤ハリ、私が取りに行ってやる。そしてビシッと言ってやる。『いくらあんたが客だろうが、あんたが金を払いに来るのが常識だろうが。そんな常識がないあんたの店は潰れるぞ。』と言って取り…

第三幕第一場 第六夜

「そのラッキョウはですね、近くの商店街の有名な漬物屋の主人らしいのです。その彼がお店に入るなりこう言ったのです。『おう、この店暇そうだなあ。何かこの店のお薦めを出してくれ。』と。それで私は、メニューにあるのは全部お薦めですよ、と言ったので…

第三幕第一場 第六夜(2)

「本当にドビュッシーのような風貌の方が来られたのですか?赤ハリ先生。」 そう質問したのはノブチンだった。 「いいえ、風貌で言えばラヴェルに近いでしょう。」 この赤ハリ先生の言葉で、ラヴェルの顔を思い浮かべられないのは、ノブチンの隣で???なる…

第三幕第一場 第六夜(1)

第六夜『うるさい客』 その次の金曜日は私とタア子の間にノブチンが座っていた。私がノブチンのメールの童話に感動して、強引に誘ったのだった。最初ノブチンは私の誘いを固辞していたのだが、赤ハリ先生のお店はお客さんがいないからと説明したら、それなら…

第三幕第一場 第五夜(3)

ある日、ハリねずみはドブねずみに言いました。 「おかあさんがね、言ったんだ。 僕を抱きしめてくれた友だちが、ほんとうの友だ ちなんだよって。」 ドブねずみの子どもは、 「なんだ、かんたんだよ。こうすればいいのか い。」そう言って、ハリねずみの子…

第三幕第一場 第五夜(2)

盲目になったドブねずみの子どもは旅をする決心を しました。 おとうさんとおかあさんは心配でなりませんでした が、結局子どもにいろいろな体験をさせることにし ました。 子どものドブねずみは、おとうさんとおかあさんが 笑って自分を送り出してくれたと…

第三幕第一場 第五夜(1)

第三幕第一場 第五夜『ノブチンからのメール』 その金曜日の次の日の夜、ノブチンから『赤ハリ通信』宛に長いメールが入っていた。正確に言うと、メールではなく物語が書かれていたのだった。 『 みなさんこんばんわ。 第一回の赤ハリプロジェクトで話題にな…

第三幕第一場 第四夜(2)

「『マスター、キープしたいのだけど一升瓶ででき る?』と彼が訊いてきたので、私はキープは900MLのハーフ瓶だけです、と言ったのですが、その方は『じゃあ一升瓶でキープするから次までに買ってお いて。』そう言ってその日はビールを一杯飲んで帰っ…

第三幕第一場 第四夜(1)

第四夜『面倒臭い男』 次の金曜日は寂しいかぎりだった。赤ハリ先生のお店にお客さんがいなかっただけではない。先生には失礼だが、このお店の中でお客さんを私達は見た事がなかった。そして今晩は、いや今晩もどうやらタア子と私の二人だけのようだった。 …

第三幕第一場 第三夜(2)

その上昇中のタコが言った。 「んで、今週は面白い客はいたの?」 「そうですねえ、ある意味お客様はみんな面白いのですが、今週特に印象に残ったお客様はですねえ・・」「おっ、印象派ですね。」と言ったノブタのくだらないジョークはみんなから無視された…

第三幕第一場 第三夜(1)

第三夜『自慢したがるケチな男』 「赤ハリ、私行ったわよ、あの店。そしたら居酒屋ではなくて、ただのワンショット・バーだったのよ。当然パスタなんてメニューに無くて、全部乾き物なの。私腹立ってマスターに、『私、乾き物嫌いなの。何か別の隠れメニュー…

第三幕第一場 第二夜(3)

「ふ〜ん、赤ハリって結構気持ちが強いんだね。で、他の同業者の客でパスタにクレームをつけてきた人はいなかった?」 「いました、いました。そのお客さんは三〇代の男性でしたが、自分はイタリア・レストランで一〇年程修業したと言ってました。うちの店に…

第三幕第一場 第二夜(2)

タア子はその揚げだし豆腐をつつきながら、 「だからあ・・・こんなのをお薦めとして提供したらいいの。で、同業者で嫌な奴とかはいなかったの?」 「同業者のみなさまは一様にいい方ばかりでしたよ。恐らく、私ではライバルにもならないと思われたのでしょ…