第三幕第一場 第六夜(4)

 私の予想通り、すかさずタア子が赤ハリ先生の話に怒って言った。
「赤ハリ、私が取りに行ってやる。そしてビシッと言ってやる。『いくらあんたが客だろうが、あんたが金を払いに来るのが常識だろうが。そんな常識がないあんたの店は潰れるぞ。』と言って取り立ててやるわ。」
 ノブタがそれに同調したように、下を見ながらタア子に続いて冷静に言った。
「ではその時にこうも言ってやりな。『お前さんは偉 そうにしているが、所詮親父さんが創設した漬物屋 を継いだだけの二代目のボンボンではないか。』とな。」
 どうやらノブタは赤ハリ先生が話している間に、何とかフォンのインターネット検索をしていたようだ。ノブタは意外にも仕事ができる男だったのだ。
 そのノブタに喰いついたのは、意外にもノブチンだった。ノブチンがボソッと言った。
「その人・・・私の中学時代の同級生かもしれない。」・・・店内の雰囲気が変わった。
 それをきっかけに、ノブチンはノブタの隣に移動して、何とかフォンを二人で見ながら何やら話をしていた。そうなると可哀想なのはオロチだ。ポツンと一人で座っていたオロチの隣にタア子が移動して彼に話し掛けていた。タア子も意外にも気が利く女だったのだ。
 結局私が一人残されたような形になったが私は全く気にしない。一人で飲むのは大好きだし、カウンターの向こうには赤ハリ先生がいる。それだけで十分だった。 (第六夜 終わり)
 #この小説はあくまでもフィクションです