実習生がやってきた(4)

 俺ははっきりと「あなたの質問はありきたりで面白くないから俺が質問する」と

言ってやった。俺の質問によって引き出した彼女の話によると、彼女は看護師にな

るために精神科はもちろん、内科、外科などいろいろと実習でまわらなければなら

ないらしい。俺は「そうだよねえ、誰も好んで精神科の看護師になりたいとは思わ

 ないよね?」と言ったら彼女は否定しなかった。本当に素直な娘だ。俺は他人の

プライベートには干渉しない対応をいつもしているので、当然、彼氏はいるの?と

か、兄弟は?とか、出身は?なんて質問はしない。短い対話時間の中で若い娘と話

すことなんてない。だから時間の最後に「今度会う時は、もっとお話ししたくなる

 ような質問を用意してきて。」と少々毒づいた。

 翌朝、俺はさっそく実習生に担当される恩恵を被った。朝の瞑想の後、少しの待

ち時間があり検温や脈拍を測り記録する。部屋ごとに分かれて各自が検温し、部屋

の代表が便の回数を聞き取りまとめて記録する。脈拍だけはナースステーションか

ら出てきた数名の看護師が患者たちの脈をとってまわる。それが終わった順に薬を

飲む飲む列に並ぶ。だから看護師が早くまわって来れば早く脈をとってもらい列に

早く並べるが、遅ければ列の後ろに並び待たなければならない。待つことが嫌いな

俺は、看護師が遅いと不愉快で仕方なかった。実習生がきた翌朝、いつもの瞑想が

終わり、いつものように看護師がくるのを待つとすぐに、俺の実習生がやってきて

なんと俺の手を取ったのだ。