朝 の 始 ま り (7)
朝の活動が始まる9時半までには少し時間があったが、同室の連中、つまりデブ
やブラックやブチは部屋からさっさと出ていってしまった。俺はなんだかみんなか
ら一人取り残されたような気分になった。どうしていいかもわからず俺はウロウロ
していた。そこへ看護師が通りがかったので、「ビギナーズ・ミーティングって、
どこでやっているのですか?」と訊いた。するとその看護師は「ヤマダさんはまだ
何もしなくていいから部屋で寝ていてください。」と言った。仕方がないので俺
は大人しく部屋へ戻った。誰もいない部屋で一人ボ~と寝ておくのも悪くはない。
そんな日が数日続いた。ある日のことだった。俺しか部屋にいない朝の時間に突然
看護師が入ってきた。入院時俺に長々と気分が悪くなるような話をしていったあの
看護師だった。どうやら俺の担当看護師のようだった。入院して数日経って病院生
活にも少し慣れていた俺にとって、その看護師の顔はもっと嫌みを帯びて見えた。
そしてその期待を裏切らない言葉を俺に投げつけるのだった。
「寝てばかりいるといつまでも退院できませんよ。明日からビギナーズ・ミーティ
ングに参加してくださいね。ビギナーズ用の用紙をここに置いておくので、毎回
これを持っていってハンコを押してもらうんですよ。」看護師はその用紙を机の
上に置くとそそくさと部屋を出ていった。俺は「何もしないで寝とけと言ったのは
そっちじゃないか。」と一人大声で呟くとベッドでそのままふて寝した。