朝 の 始 ま り (4)
「おはよう、散歩に行くんだ。どのくらいの時間歩くの?」 ピンクが「たった
10分くらいだけどけっこう気持ちいいよ。ヤマちゃんもビギナーズが終わった
ら一緒に歩こうよ。」と言ってくれたので、俺は「ビギナーズって何?」とピン
クに訊いてみた。彼女によると、入院したばかりの患者が受ける講習で日曜日以外
の毎朝きちんと参加すれば14回、つまり2週間で終わるとの話だった。それにブ
チが補足するように言ってくれた。「つまり2週間は絶対に外には出られないとい
うことです。ビギナーズが終わっても主治医の許可が出て、看護部長が判を押さ
ないと外出はできません。ボクが知っているパターンでは、1ヶ月主治医から許
可が出なくて、やっと出たと思ったら今度は看護部長から判を押してもらえず、
結局1ヶ月半一歩も外に出られなかったからですからねえ。」と言いながら鼻で
笑った。
そうこうするうちに看護師が鍵を持ってやってきた。施錠されたドアをそれで開
けると、順番に点呼を取りながらノートにチェックして、階段下へ向かって「下で
待っててよ。」と言いながらドアを閉めて姿を消した。すぐにドアを施錠する音
がして階段を駆け足で降りる音が響いた。俺は昨日に感じた監獄にいるような感覚
を再び思い出した。