朝 の 始 ま り (5)

 朝9時から始まる朝礼の前に、15分間の瞑想の時間と投薬がデイ・ルームで行

なわれる。瞑想は8時10分に全員が集合したら、「瞑想はじめ!」の号令と共に

各自が目を閉じて瞑想する。(のような雰囲気を醸し出している)デイ・ルームの

一部がナース・ステーションに隣接しているので、瞑想の静寂の中で看護師たちの

声が妙に響いて耳に入ってくる。それが仕事の打ち合わせだったら俺も神妙に瞑想

できるのだが、それが雑談や笑い声だとどうにも集中できない。ただでさえ集中力

が欠如している俺にとって、耳に入ってくる雑音はそのまま耳に障る。しかたがな

いので、この時間は暗楽譜した曲を記憶の中で復唱再現してみるようにした。それ

からは、この瞑想の時間は俺にとって貴重な時間になった。何故なら曲の記憶が曖

昧になると、さらにその記憶の糸口すらもつれてしまって頭が混乱してしまう。そ

うこうするうちに瞑想の時間はあっという間に終わる。終わってからも看護師たち

がナース・ステーションから出てくるまでそのまま全員が待っている。看護師が出

てきたら部屋単位の患者ごとに脈をとってもらって、一日の便の回数と体温とを用

紙に記して提出するのだった。それが終わり次第、ナース・ステーション前に一列

で並ぶ。一人ずつ薬を渡され3人の看護師が見ている前でそれを飲み干すのだ。そ

こまで確認しないと飲まない輩もいるのだろう。俺の順番がきた。名前を言って手

渡された薬を見てギョッとした。とにかく驚いたなんてものではない。

された

 

   *これはフィクションです