朝 の 始 ま り (2)
デイ・ルームに行ってみると、けっこうみんな集まっていた。だが、昨日の夕食
の時の人数を考えるとその半分もいない。デブもブラックも来ていなかった。
ラジオ体操の音楽が流れ始めた。ラジオ体操なんて何年ぶりだろう、と思いなが
ら身体を動かした。目線の先には何名かが頑張って体操をしている。久しぶりの体
操はけっこう長く感じた。やっと終わったと思ったらすぐに「ラジオ体操第2番」
の曲が流れ始めた。げっ、2番もやるのかよお、と思い出しだし遅れ気味に身体を
動かした。ラジオ体操の1番も2番も有名なクラシック日本人作曲家の創作したも
のだ。俺は小さい頃以来の第2番を体操しながら頭は別の事を考えていた。第2番
だけ体操するなんてまずないだろう。ということは、著作権料も第1番の作曲家の
方がはるかに多く貰っているのだろう。毎日全国のどこかで行われているラジオ体
操の曲が、そのまま著作権料として作曲家の懐に入っていたのだろうか?だとした
ら、有名な小説家だったお父さんよりはるかにたくさんお金を儲けていたはずだ。
邪心いっぱいのぜい肉の塊が、テンポ悪く身体を動かしているうちに「ラジオ体操
第2番」が終わった。1番も2番も身体の動きによく合ったいい曲を付けているな
あと感心した。ラジオ体操が終わると朝食だ。朝食はワゴンでは配膳されずに各々
パンと牛乳をのせたトレーをナース・ステーションで受け取り席に着く。俺の朝食
のトレーは既に席に置かれていた。入院したばかりからだと思ったが、そうではな
いようだった。
*これはフィクションです。