院内食事風景(1)

 夕礼、夕食はみんなデイ・ルームに集合した。休憩時にはみんな思い思いに腰掛

けていた椅子だったが、夕礼からは各自座る席が決められているようだった。

 俺が周りを見ながらボ~と立ち尽くしていると、忙しそうな看護師が俺に早口で

座る席をお知えてくれた。

 「起立!」の号令で夕礼が始まった。5行節からなる誓いの文言を、前に立って

いるリーダーとみんなが1節ずつ交互に唱和する。合宿や会社など一般社会の中で

どこにでもある風景なのだろうが、そのような社会人生活を送ったことのない俺に

は大いなる違和感があった。

 その夕礼が終わると夕食の時間だが、その準備でしばらく待たされる。みんなが

各々雑談したりして待っていると、大きなワゴン車が2台運ばれてきた。約100

名分の配膳をその2台のワゴン車で賄う。ワゴン車の周りに患者たちがゾロゾロと

集まる様子は餌付けされた豚のように見なくもない。数名の看護師たちが名前を呼

びながら膳を手渡していく。整然と並んでいないのは毎回呼ばれる順番が違うから

だろう。まさしく餌付けそのものの風景だった。俺はどうしたらいいかわからず、

またもボ~と1台の配膳車の前に立っていると、先程とは別の看護師が来て「ヤマ

 ダさんの分はテーブルに置いてあるわよ。」と言って忙しそうに去った。俺が席

へ戻ると確かに膳が置かれていた。みんなそれぞれ勝手に食べ始めている。そりゃ

そうだ。身体の調子などで食べる速度も違うだろう。俺は食欲なんてなかったが、

とにかく箸を付けた。ブタのメシかもわからないくらい味を感じなかった。

 

    これはフィクションです