院内ブラブラ歩き(4)
看護師たちはみんな鍵を腰からぶら下げていた。ナース・ステーションの出入り
から診療室、処置室や階段に通じるドア、エレベーター、それに給食用のエレベー
ターや面会室などまで至る所が施錠してあった。それを看護師たちが一々合い鍵で
開閉していた。一カ所、どこへ通じるのかがわからないドアがあった。これが噂の
ピンク部屋へ通じるドアだと察した。だって掲示されていた見取図にはこのドアの
存在もその先にある部屋らしき存在も記してはなかったのだ。
俺のいる3階はナース・ステーション(デイ・ルーム)を挟んで左右にA棟B棟と
分れ、各棟に2本の廊下が延びていて病室が並んでいる。病室はAB各棟8部屋あり
それ以外に1ヶ所ずつトイレ、洗面場、面会室があり、男女の浴室があった。それ
に作業所と称す40人程入る教室があった。ベランダは昼夜意外は施錠してなく、
洗濯機が3台置かれてあり物干し場になっていた。各病室のドアは小さなガラス窓
から中を覗けるようになっていた。中で各自がカーテンを閉めればプライベートな
空間になるし、開けていても機能的な机やタンスの一体型の家具で隠されるので、
寝ているか起きているかしかわからない。とても良くできた建物内の構造は、合宿
所以上に心地良さそうだった。これで十分に迷わず病棟内を移動できそうだが、な
かなかそうはいかないのだろう。各病室の部屋番号札には、手作りの動物の絵がブ
ラと下げられていたことが物語っていた。さっき怒鳴られていたおじいちゃんは、
ぞうさんの絵が下がっている部屋へ消えていった。