キアーラが練習を休んだ日(2)


(ルナピンスキーのますますのアップです)
 その日、キアーラはピエタ合奏団の練習を無断で休んだ。その日はキアーラがヴァイオリン独奏をする協奏曲の練習日だった。キアーラが練習をさぼるような娘ではない事は、ピエタの誰もがわかっていた。だから皆は、キアーラが急病なんだと思っていた。
 パオラもそう思った。だから弦楽合奏の練習の時に、バッソンの個人練習をさぼってキアーラの部屋へ行ってみる事にした。
 キアーラの部屋の前にきたパオラは、、す〜う、と深く息を吸って、そのまま止めた。そしてドアに耳をつけて、中の様子を息を飲みながら伺った。
 中は完全な静寂だった・・・ではない・・・が、物音がはっきりと聞こえない。いや、小さな嗚咽のような声にならない声が聞こえた。
「あっ、やっぱり気分が悪かったんだ!」
 パオラはドアを何度も叩いた。
「キャラ、大丈夫?・・・キャラ、パオラよ。お願い開けて、キャラ、大丈夫?」
 中からなんの反応もなかった。不吉な予感がしたパオラは、今度は静かにノックをしながら
「キャラ、大丈夫?・・・私よ!開けて、お願い。開けてちょうだい。」
 パオラは泣きながら言った。泣きながら、キアーラがドアを開けてくれるまで待った。中の様子も気がかりだった。だからできるだけ静かに泣いた。静かに泣きじゃくった。
 しばらくして、ス〜と、ドアが開いた。
 パオラはキアーラの顔を見るなり、ただならない程の重大な事が、キアーラの身に起こったのだと察した。