院内ブラブラ歩き(2)

 テレビを見て楽しそうではなかった理由はすぐにわかった。画面は明らかにNHK

だとわかった。院内ではNHK限定で活動時間外のみ映し出されるようだ。つまり、

みんなが休んでいる昼の時間はNHKもやる気がないようだ。テレビはナース・ス

テーションからよく見える。誰かがチャンネルを変えようものなら看護師が飛んで

きてNHKにチャンネルを戻す。でも競馬中継が始まろうものなら、すぐに消されて

しまう。何故ならここはギャンブル依存症患者もいるからなんだと後日わかる。

 ナース・ステーション内は大きな窓から中がよく見えた。つまり向こうも窓越し

にこっちを監視しているのだった。ここで患者たちに洗濯洗剤を提供したり、爪

切りや耳掻きやハサミを貸し出したりしている。当然それらは危険物なのでナース

ステーションの目の前のテーブル周辺で使わなければならない。看護師たちは医療

行為のみならず、そのような雑事にも追われている。だからナース・ステーション

を見ていると面白い。「おやつをくださ~い。」と言ってくるのもいる。看護師は

「はい、ちょっと待ってよ。」と言って渡したり、「しばらくおやつはあげられな

 いわよ。」と言われたり、「さっき食べたでしょう。今日はこれでおしまい。」

てな具合だ。そこへ荷物を持った年配のおじいちゃんがやってきた。

 

   *これはフィクションです