院内ブラブラ歩き(6)

 その声の主は向こうから俺の方にやって来て、「私の名前はももこ。

 あなたの名前は何ていうの?」と訊いてきた。「俺?ヤマダだよ。」

「じゃあ今度からヤマちゃんって呼ぶね。私はみんなからモモちゃんって呼ばれて

 いるからよかったらそう呼んでね。」そう言われた俺は「うん、よろしく。」と

軽く頷き部屋へ向かって歩いた。俺は一人呟いた。「ももちゃんかあ・・・じゃあ

 あだ名はピンクだな。実際、彼女はポッチャリとピンク色をして可愛かった。

「ピンクにデブにブラック。ええとそれにブチだ。少しずつ名前を覚えていかな

 きゃなあ・・・住めば都かあ、ここはここでけっこう楽しいのかもなあ・・・

 いかんいかん。もう洗脳されている。今は何も考えずにゆっくりと休もう。」

 部屋に着くと、ブチは相変わらず横になって本を読んでいる。デブが俺を見て

「もうすぐ夕礼があって夕飯だから一緒に行こう。」と誘ってくれた。するとクロ

が「まあ不味くて喰えたもんじゃないがな。」と言った。デブが「しょうがない

 さ、豚のメシみたいなものだから。」言って笑った。俺はちっとも笑えなかっ

た。(本当の意味で、豚のメシではないか!)と、自虐的になるほどの元気はな

かった。そこへブチの声がした。「病院食なんてこんなものですよ。薄味だから

なんでも不味く感じるのですよ。それにアルコールは出ませんからね。ああ~、

 飲みてえ~!」俺は苦笑しながら少しホッとした。みんなそれなりに仲良く

やっているようだった

 

     *これはフィクションです