第三幕第一場第七夜(12)

「実はですね先生、無料の発表会でもプログラムにゲストの方の演奏があったでしょう。ゲストの方の演奏が著作権に該当しない曲ばかりでも、ゲストの方に謝礼を払えば発表会全体で著作権料は発生します。ですから去年の発表会では子どもが何人かと俺と権藤さんが映画音楽を、そして響ちゃんが8分程度の現代曲を演奏していたので本当は著作権料として2000円は掛かるのです。これは先生が知らなかった事にしておきましょう。」ウンウンと肯いたり、え〜と驚いたりしているみんなに、木のてっぺんに登った野豚は衝撃の言葉を続けた。
「話を戻す事になるのだけど、さっきカルチャーセンターにも著作権が掛かるって言ったでしょう?あれって先生のレッスンにも掛かるって言いたかったんだ。少なくても俺を含めて先程の発表会で著作権に該当する曲を演奏した者は7名、その者達を先生はレッスンをしている筈だから・・・先生のレッスン料はワンレッスンが3000円だから1曲をレッスンするのに150円掛かる筈です。」
 みんなは更に、え〜と声を発するし、野豚に批判の目を向ける者も・・・
「だから言いにくいって言ったではないですか。こうなったら俺はとことん悪者になりましょう。響ちゃん、発表会で難しい現代曲を弾いていたけど、その曲が入ったCDを先生から借りたりしなかった?」
「うん借りたよ。最終的にはうちも買ったけどね。」
「先生、そのCDを貸すのに50円を著作権協会に払わなければならないのですよ。」
 しばらく店内が大騒動になった。
 その間、ノブタは茹であがったチャーシューみたいな赤ら顔をして大人しくしていた。