第三幕第一場第七夜(11)

 そこへ弁護士ノブタがまた話に入ってきた。
「それが無難だと思いますよ、先生。著作権って結構複雑なんです。例えばただのBGMでも、入場無料で500人集まる場所では2時間1800円掛かり、それが入場料を2000円取ると著作権料は一気に9000円になります。」
彼の話に一同、え〜!という反応が。ノブタの舌はますます滑らかになった。
「例えばフィギュア・スケートの大会があるでしょう。入場料3000円取って1500人の観客を集めれば2時間で4万円だよ。これは訴訟があったので知っているけど、競技全体の時間が3時間程度あって、それを全体の時間分として著作権協会は6万円を請求したんだ。けどスケート協会は純粋に曲が流れた時間分しか支払わないと主張したんだ。ところが演技中だけ音楽が流れていた訳ではなく、休憩中にもBGMが流されていたんだよね。結局だね、フリーの曲が4分以内だったので、5分以内が1曲2000円という著作権協会の別の規定に則して演技者24人分4万8000円をスケート協会が著作権協会に支払うという事で解決させましたよ。」
 フィギュア・スケートという女性に人気の例え話が好評だったので、ノブタはますます有頂天になって話を続けた。(豚もおだてりゃ木に登る・・・かあ)
「カラオケを置いているスナックだって著作権料を払っているんだよ。10名程度の客席のキャパシティで月額4000円を払っているんだよ。で、これは先生を前にして本当に申し上げにくいのですが・・・カルチャーセンターにも著作権は掛かるのですよ。だから先生のレッスンにも著作権料が掛かるって訳。先生、知っていました?」
「いいえ、発表会にコピー譜を使ってはいけない事はわかっていましたから、みなさんの演奏する曲の楽譜は全部用意していましたが、発表会費は無料でしたから実は著作権料は掛からないと思っていましたよ。」
その先生の言葉に、ノブタ以外の全員が、先生が楽譜を用意していた件にへえ〜という表情になり、発表会は無料だからの件にウンウンと肯いた。