噂のピンク部屋(1)

 俺の向かいのベッドで横になっていたデブが半身を起こしてこっちを見ていた。

「ここは刑務所みたいなものだ。いや刑務所の方がまだマシかもな。」

俺は刑務所の中は知らないが、この部屋は病院とは思えない程に寒かった。

ベッドには薄い布団に2枚の安げな毛布が用意されているのだが、彼らは

ダウンジャケットに包まっていた。デブはそれに布団と毛布を引っ被って言った。

「ワシらは囚人と同じだよ。窓は開かないし、この階から降りられないように鍵を

 掛けられているよ。それに変な言動をしたら、特別な部屋へ連行されちゃうぜ。

 ワシらはピンク部屋と言ってるよ。」 俺はデブを胡散臭く思い少し警戒して、

デブに訊き返した。「そのピンク部屋とやらをあなたは見たのかい?」 その時、

デブの隣で寝ていたクロが口を出してきた。どうやら寝てはいなかったらしい。

「オレは見たぜ。知らないうちにこの病院へ運び込まれていたんだ。目を覚まし

 たらピンク色の部屋だったんだ。そこが噂のピンク部屋だと後で知ったのさ。」

その時だった。外の廊下の方が急に賑やかになった。デブが俺に言った。

「おやっ、新しいのが入ってきたな。ありゃ確実にピンク部屋行きだな。」続けて

クロが「お前さん、見てきたらいい。後学のためになるかもしれないぜ。」と俺に

向かって訳ありげにニヤッと笑って言った。

 

     *これはフィクションです。