ルナちゃん通信おしまい


(私の理想の か た ち)
 台風が接近している今現在(8日夕方)、僕は夕方の予定を全て取りやめ家で過ごす事に決めた。ならば時間ができた!僕はDVDでオペラを流している。一人ならばゆっくりと最後まで観賞できただろう。ヴェルディの『ドン・カルロ』だ。終演は8時は過ぎるだろう。しかし僕には家族がいる。息子は大学の受験生だ。それなりに気を遣う。嫁さんも8時には帰ってくる。それなり以上に気を遣う。実際に僕が夕方からの予定をキャンセルした事を伝えると、早速僕を今晩の食事係に任命してくれた。まったく名誉なことである。
 僕は、台風の接近に備えて雨戸を全て閉めた。薄暗い部屋の中では各々が勝手な事をやっている。息子は先程帰ってきて、僕が今晩ずっといる事を告げると別室に拠点を構えて勉強を始めた(受験生なので多分勉強なのだと信じたい)。
 ルナちゃんはソファの上で丸まってぐっすり眠っている。そこが飽きると今度は自分の部屋に戻ってお布団を掘りながら横になるのだろう。以前は敷布団一枚まるまる敷ける広さがあったルナちゃんの部屋も今は三分の二の広さになったので(それでも贅沢な位に広いと僕は思う)気に入らないのだろう。自分で広げてやろう思っているのか、最近やたら掘るようになった。すると布団が破れ中から綿が出てくる。それを嬉しげに咥えながら『あいつら』が遊ぶのだった。もっともルナちゃんの部屋が狭くなったのは『あいつら』の為に猫タワーを設置してやったからだ。猫タワーは登りやすく縄でグルグル巻きにした柱が一本は天井まで一本はその半分の高さまであり、その柱間をいくつかの踏み台とツリーハウスとハンモックが付いた、とっても楽しい代物なのだ。楽しさは『あいつら』を見ているとわかる。2万円出してでも買ってやってよかったとつくづく思う。その『あいつら』、カイちゃんは今網戸を登ったり走りまわったりでバタバタしている。今は特に風が吹きはじめ外が騒々しくなってきたので気が気ではないようだ。シーちゃんはミャ〜、ミャ〜言いながら僕のパソコン作業の邪魔をする。
 ライ君は腹ばいに横になっているが『あいつら』がバタバタする度に落ち着かないでハッハハッハ言っている。僕がそのライ君を見て目が合うとライ君が寄ってきて僕の足を舐めて行った。いちいち反応する。今別室から息子の口笛が聞こえてきて、ライ君はバタッと起きて別室のある方角へ向かう。いつもながら落ち着きがない奴だ。
 ルナちゃんは・・・やはりソファで寝ているがさっきと少しだけ体勢が違う・・程度だ。カイちゃんとシーちゃんは今取っ組み合って遊びだした。ライ君がそれに参加できずにハッハッハと動き回っている。
 これからもしばらくはこんな光景が続くのだろう。大型犬は長生きできない。超大型犬のルナちゃんはあと3年も生きられないのだろう。こんな光景が少しでも長く続く事を願わずにはいられない。
 ルナちゃんの本当の理想は今日の写真のような状態だろうが・・・どうやらそれは無理なようだ。
(ルナちゃん通信 終わり)