第三幕第一場 第五夜(2)

 盲目になったドブねずみの子どもは旅をする決心を しました。
 おとうさんとおかあさんは心配でなりませんでした が、結局子どもにいろいろな体験をさせることにし ました。
 子どものドブねずみは、おとうさんとおかあさんが 笑って自分を送り出してくれたと思っていました。
 おとうさんとおかあさんは、その日から毎日泣いて 暮らしていたのです。

 ドブねずみの子どもは、なかなか友だちができませ んでした。
 自分は目が見えないから、みんなが友だちになって くれないのだろうと、ドブねずみの子どもは思って いました。
 それでも、いつでも笑顔を忘れないようにしていま した。
 そうすればいつか友だちができる、そう信じていま した。
 だって、おとうさんもおかあさんもいつも笑顔で待 ってくれている。
 自分が友だちをみつけて帰るのを笑顔で待っている と信じていました。
 
 ある日、ドブねずみの子どもに友だちができまし  た。その子はハリねずみでした。
 ハリねずみの子どもも友だちがいませんでした。
 そのハリが危ないからと、みんなが逃げていくのだ そうです。
 盲目のドブねずみの子どもに、そのハリが見えるわ けありません。
 ドブねずみの子どもに見えるのは、ハリねずみの清 らかな心だけでした。
 ドブねずみの子どもととハリねずみの子どもはは、 すっかり仲良しになりました。