第二幕第二場(2)

 最初に出て来たのは『おでん』だった。
 少し大きめの少し深いお皿の中に、大根、こんにゃく、玉子、厚揚げ、つまりおでんの王道達が足湯に浸かって鎮座していた。一同歓声をあげながら各人お箸を手にした。
 赤ハリ先生がおでんを語り始めた。
「この味に辿りつくまでに相当時間がかかりました。
 (おいおい、赤ハリったら大袈裟な!準備に入って まだ一週間だぞ。いけないタア子の口癖が・・・)
出汁の色はいかにも関東風な黒い色をしていますが、一切醤油を使用していません。
 (一同『へえ〜』などと言って食べ始めた)
ですから関西風に出汁の効いた薄味にしてあります。本来は出汁も透明感のある品のいい風合いを演出したかったのですが、それだと日が持たず、どうしても日々出汁を作りかえなければならなかったのです。そこで出汁の色を妥協する事でコストを軽減しながら安定した味を提供する術をとりました。」
「あら先生、このお出汁は牛スジ肉を使っていらっしゃいますね?」
「おお、さすが神杉さん、その通りです。薄味の出汁にコクを出す為にはそれがどうしても必要でした。厳密に言うと牛スジ肉ではなくアキレスです。」
「あのお、何を言っているのかうちには全然理解できないんですけど〜。」
タメ池がそう言うと普段口数の少ない大学生の山多君ことオロチが口を開いた。