第二幕第二場(13)

「あの先生、わたくし先程から美味しい物を頂きながら思っていたのですが、みなさんにお出ししているお皿がバラバラなのは、前のお店がそうだったのですか?」神杉さんだ。
「いえいえ、このお店は居抜き物件でしたが、お皿等は全て処分されていました。お皿の類は今日の為に自分の所から掻き集めて持ってきたものです。」
「それではお皿も一から集めなければならないのでしょう?それは大変ですわね。」
「ええ、それで100円ショップに行って探してみようと思っています。」
「あ〜赤ハリ、100円ショップは知っているんだ。デパートしか知らないのかと思っていたよ。」
このタメ口は池野響だ。タメ口コンビのタア子こと安藤多賀子が続いて言った。
「赤ハリ、いくらなんでも100円ショップの皿はまずいのではないの?一見よさそうな物でも所詮100円の価値しかないって話だよ。」
 100円ショップの話が始まると、ノブチンが下を向いて携帯電話を操作し始めた。
 その様子を隣で覗いていたイルカさんが訊いた。
「先生、この店が居抜き物件で経費が掛からないとはいえ、あと何が必要なの?」
「そうですねえ、冷蔵庫にガスコンロ、そうそう炊飯器も必要ですね。あとは皿やコップ、箸にフォーク、スプーン等いろいろです。」
「なんだあ、結構いろいろと必要な物があるじゃん。うちはなんでも揃っているって聞いたから本当になんでもあるのかと思ったよ。そんなんじゃ買いだしだけでも大変じゃん。」
タメ池がそう言うと、すかさずノブタが言った。
「それでもこの店の条件は、とてもいい方だったんだよ。そこにある製氷機なんて居酒屋の生命線だからね。このタイプは30万はするよ。それにキッチンシンクなんて新しい物を取り付けると100万は軽く超えるし、そこのステンレス製の棚も100万はするね。」
「ふ〜ん、ノブタさんって弁護士なのに、なんでそんなに詳しいの?」