第二幕第二場(6)

 そこへバカな事を言う奴がいた。タメ池ではない。タア子だ。
「この店の名を、多賀子が里のようにくつろげる店という意味を込めて『多賀里屋』っていうのはどう?」
因みにタア子の正式な名前が多賀子だ。
このタコの冗談なのか本気なのかわからないバカな提案は、この私が即座に打ち消してやった。
「それではまるで赤ハリ先生がお客さんにタカッテいるみたいじゃない。却下よ。」
「それじゃあ・・・
  (こいつまだ言うか!)
         赤ハリでいいじゃない。」
?????(一同)
「『赤いはりねずみ』よ。だって赤ハリが尊敬するブラームスがウィーンで通っていたレストランの名前でしょう?そのまま『赤いはりねずみ』でいいじゃない。」
 店内の空気が変わった。イルカさんはノブチンと、タア子はノブタと、タメ池はオロチと話を始めた。神杉さんも私に、「赤いはりねずみって素敵な名前よねえ。」と話しかけてきた。
 そこへ赤ハリが先生が二枚の中皿を各人の前に置きながら言った。
「私もその名前が気に入りました。みなさんも気に入ってもらえたのなら『赤いはりねずみ』に決定したいと思います。」
 一同拍手で応えた。