ここはいったいどこなんだ(4)
俺は気力を奮い立たせ何とか反論した。
「そんな馬鹿げた事は承知できない。俺は肝硬変で入院しただけだ。」
「あなたはここでアルコール依存症の回復治療プログラムを受けてもらいます。」
「そんな事は認められない。俺は肝硬変でアル中なんかではない。」
「いいえ、あなたはアルコールに問題があったからここへ入院したのですよ。」
「俺はもう1ヶ月以上酒を飲んでないし、もう酒は止めたんだ。」
「みなさんそう言われます。あなたの意思では退院できませんよ。あなたは
4ヶ月の入院になっています。2ヶ月経ったら外泊として家へ帰れますが、
自宅でゆっくりする時間はありません。病院バスが午後3時に出ますので、
それに乗ってもらいます。夕方自宅へ着いても夜7時からの断酒会に出席して
もらいます。翌朝は最寄りのJR駅まで病院バスが迎えに行きますので、病院へ
8時半には戻ってきてもらいます。4ヶ月後、たとえ退院できても、そのまま
病院へ毎日通院して朝から夕方まで
こちらで過ごしてもらいますからそのつもりで覚悟しておいてください。
ここでは何も考えないで、決められた事をして過ごすのが一番です。」
看護師は手にしていた印刷物を俺の机に置くと言った。
「いろいろな決まり事などは全部これに書いてあるから、今日中にゆっくりと
見ておくようにね。」白衣を纏った悪魔は、奈落の底へ落ちた哀れな子羊なる
俺を凝視して、更に深く奈落を掘り下げて部屋を出て行った。
*これはフィクションです