ヴェネチアの娘たち(2)
(私もちょっと手紙を・・・)
フランツからの手紙が、お迎えの馬車で届けられたのは二日後だった。その早急さが、自分が見た事の重大さを物語っていた。
『アンヌ、お前は今からヴェネチア共和国へ行くの だ。そこには教会の孤児院がいくつかある。その中 の一つに優秀な合奏団と合奏団をかかえたその孤児 院がある。そこの教師はお前もよく知っているヴィ ヴァルディだ。
この教師はそこへ向かってくれる。
アンヌ、そこでは合唱団に入りなさい。
そこの合唱団は、演奏会で観客から顔を見られる 事がない。私もそれで安心できる。
そして今日からお前は、オーストリア人だ。そし て名前は[アンナ・マリーア]だ。[アンナ・シャル ロット]の名前は、今から封印するのだ。わかった ね。
私はもうお前とは連絡をとらない。それも全て は、アンヌお前の為なのだ。
最愛なる妹アンヌへ
お前の忠実なる兄フランツより 』