ヴェネチアの娘たち(5)


(昔こんな娘もいました・・・)
 始めて見る練習はヴィヴァルディの有名な協奏曲【春】だった。これはピエタ合奏団がアンナを歓迎する意味もあった。【春】はヴァイオリン協奏曲の中の一曲で、ヴァイオリン独奏はキアーラが担当した。
 そこでアンナは、キアーラの素晴らしい技術を持ったヴァイオリン演奏を聴いた。速い音階や分散された和音を弾いていても、音程や音色が全く乱れない。だから難しい曲想も安心して聴いていられた。キアーラだけではない。ピエタ合奏団の演奏技術も予想以上に素晴らしかった。まず弓使いが整然と統一されていて見た目が美しい。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどの弦楽合奏のハーモニーは音程がいいので、合奏全体が明るく澄んだ響きがしていた。それにチェンバロという鍵盤楽器に、マンドリンという弦楽器が加わっていた。それらが、伴奏以上の存在感をもってピエタ合奏団の響きを支えていた。