ヴィヴァルディ、ピエタに現れる(4)


(ライヴィッチです)
 キアーラが写譜を頑張っていた夜、ほとんどの先輩たちはおしゃべりに花を咲かせていた。先輩といっても、学校のように3年上級なんてレベルではない。平均年齢が30とも40とも言われているピエタの『合奏の娘たち』だ。キアーラは、10代20代のお姉さまや40代のお母さまのような先輩たちと、ピエタで一緒に暮らしていたのだ。
 いつしかキアーラは、ピエタの陰湿な雰囲気を変えるような存在になっていた。彼女の生まれ持った明るさと努力は、周りの人たちも次第に認めざる得なくなっていた。
 そんなキアーラの元気な素の一つは、もちろんヴィヴァルディの曲だった。