キアーラの部屋を出て


(ここはライヴィッチの部屋なのだニャ〜)
 その時パオラは、一つの答えを見出していたようだ。アンナとパオラがキアーラの部屋を出た時だった。パオラがアンナに言った。
「アン、あなたの質問は、うまくキャラにはぐらかされちゃったわね。
 明日は私たちお休みだから、一緒にヴェネチアの街を歩いてみない?私がキャラに変装していろいろと話してあげるわよん。」
 アンナはパオラに向かってはっきりと、
「ありがとうございます。それでは明日はよろしくお願いします。」と言って、二人はそれぞれの部屋へ別れた。
 別れた後の薄暗い廊下を歩きながら、アンナはなぜか目に涙が溢れてきた。部屋へ戻ると、もっと涙がこぼれてきた。アンナは小さい頃から人前では泣かなかった。自分の部屋でしかなかなかった。自分の部屋だけが、アンナの心が休まる唯一の場所だったのだ。不覚にも今日は、自分の部屋へ戻る前に泣いてしまった。部屋へ戻ると、まだそんな自分がいた事に感謝した。するとまた涙が流れた。
(こんなにも早く、素敵なお姉さまに出会えるなん  て・・・)
 アンナが生れて初めて経験する涙だった。