キアーラの恋人アントニオ(3)


(ん?)
 アントニオは25歳でヴェネチアを巡るゴンドラの船頭になった。
 キアーラはそれを自分の事のように喜んだ。5歳の頃からピエタにいたキアーラは、外の世界を知らなかった。だからこそ恋人であるアントニオの人生に、自分が精神的にでも関われるのが嬉しかったのだ。
 だが、アントニオはキアーラ本人の自覚以上に、キアーラの事を考えていた。そして、自分の存在がキアーラの足手纏いになっているのではないか?・・・とも考える事もあった。
 確かに20歳のキアーラはそんな周りの雰囲気には疎かった。だって、本当にピエタの事が何より一番だったし、ピエタにいたアントニオだからこそ、誰よりもそれをわかってくれると信じていた。