キアーラの恋人アントニオ(4)


(ん?)
 ピエタの孤児院は、もちろん恋愛禁止ではなかった。それどころか、恋愛を奨励していた。恋愛の先にある結婚、それこそ孤児としてピエタに預けられた娘たちの『もっとも幸せなかたち』なのだから。
 実際、席から顔を見る事のできなかった『ナイチンゲールの鳥かご』の娘たちも、貴族たちには特別な方法で見る事ができた。特別な方法の一つで、かつ最も簡単な方法が教会や孤児院への寄付だった。しかもそれは、多いければ多いほど、いい待遇を与えられた。
 たくさんのナイチンゲールが、貴族のもとへ貰われていった。それは必ずしも結婚という形式ではなかったにしろ、それを不幸だとは思ってはいけない。少なくともピエタの中では、そんな空気で覆われていた。