キアーラの恋人アントニオ(2)


(ルナの片思いの恋人モナカです❤)
 16歳になったアントニオは、ピエタを出ていかなくてはならなかった。
 声のよかったアントニオは、ヴェネチア歌劇場のテノール歌手になる夢があった。それに教会から推薦状がもらえる事になっていた。ところが、突然にその話がなくなった。
 結局アントニオは、ピエタ近くの国営造船所の船大工として働く事になった。そこは、アントニオが14歳の頃から見習いとして出入りしていた所だった。
 その時のキアーラは、まだ14歳だった。アントニオがピエタから出ていってからも、キアーラは国営造船所に行ってアントニオに会っては、ピエタでの様々な悩みを相談したりした。二人は人生の階段を共に励まし合い、確実に歩んでいたのだった。
 キアーラは歳を重ねるにつれ、ヴァイオリンの技術はもちろん、ピエタでの音楽的な立場も確立していった。それもアントニオの存在があったからこそキアーラも頑張れたのだった。
 アントニオは16歳で船大工になったものの、23歳でそこを辞めてしまった。しかし彼はその理由をキアーラに話さなかった。いや、話せなかったのだ。
 キアーラは既にピエタの大きな看板を背負っていた。それはアントニオだけでなく、ピエタや教会の関係者の誰もがそう認識していた。