オーデションとアントネッラ(3)


(オーデション参加2名)
 キアーラは自分のへやにアントネッラを呼んで、高音部管楽器をするように伝えた。そしてオーボエを集中して練習するように彼女に課した。アントネッラは素直に喜んだ。その傲慢で無神経な素直さに、キアーラは嫌悪した。
 次にパオラが部屋に入ってきた。少しの沈黙の後、キアーラはパオラを正面から両腕で抱きしめた。パオラの温もりを胸に感じると自然に涙がこぼれた。優しい温もりを感じながらパオラの耳元で囁いた。
「パオ、ありがとう・・・そして、ごめんね・・・私、あなたの努力に報いてあげる事ができなかった。悲しいわ。」
 するとパオラは、すっとキアーラの両腕からすり抜けて、少し離れて立った。そして、笑顔でキアーラに言った。
「キャラ、私はぜんぜん悲しくないよ。私、ピエタで演奏できる事が幸せなんだよ。有名人のキャラと一緒に演奏できるなんて、私は世界一の幸せ者だと思っているの。しかもそのキャラと仲良くしてもらっているのだから、私は打楽器ではないけれどバチがあたりそう。これは本当の本当の本心よ。それに私はバッソンをアントネッラの横で吹くのが楽しみなの。彼女は本当に上手いわ。私は所詮オーボエやフルートのキャラではなくバッソンのキャラだったのよ。でもキャラのキャラは大好きだから、いつまでも私のキャラでいてね。」
「うんうん、わかっている。パオは私の妹、かけがえのない大切な妹よ。」
「じゃあ行くね。私、キャラの涙なんて見たくないから。バイバイ、また遊んであげるから泣かないでね。キャラ姉さん。」
 パオラはそう言い残してキアーラの部屋を出ていった。