ビギナーズが終わった日(2)

 まさに養豚場の出荷チェックだ。しかも一件も見落とさないようにと厳重に行っ

ている。みんながそこを出ていったらドアが閉められ鍵が掛けられるのを俺は何度

もデイ・ルームから見ていた。一階から外へ出るドアの所でも同様のチェックが行

われているのだろう。俺はその最初のチェック時で呼び止められたのだ。なぜ名簿

に俺の名前が載っていないのか彼に問うても、自分は判らないから看護師に訊いて

くれと言う。それはそうだ。彼はただの患者だ。なんの権限もない。そこで俺は

スッポン・・いや担当看護師に訊いたら、看護部長の許可印が無いからダメだとの

答えだった。ここでは主治医の許可が出ても、そこから担当看護師の印が押され、

看護部長の印が押されてやっと全ての手続きが完了し成立するらしかった。まさに

豚の国外出荷並みの厳重なシステムだ。俺たちは豚か?もしかしてブランド豚?

まさかねえ、だがここはある意味で有名な病院らしいので、俺たちは立派なブラン

ド豚になる。俺はここで看護部長の強い権限を始めて思い知らされる日になった。

ちなみに看護部長は優しいおばさまという雰囲気の女性だった。だが人は天使とは

違う。見かけによらないのはどんな世界でも一緒だ。優しいボーダーコリー犬だっ

て仕事をする時は厳しく羊や牛の群れを管理している。老いた豚の群れなんて彼女

にとっては朝飯前だろう。そう俺たちはまさに囲いの中の豚なのだ。