DVD鑑賞会の話
部屋へ戻るとデブが俺に、初めて俺が参加したビギナーズ・ミーティングの感想
を訊いてきた。俺が実際に感じたことを適当な言葉で答えると、デブはちょっと驚
くようなことを言った。デブの話によると、DVDはビギナーズ・ミーティングにだ
け鑑賞するのではないらしい。12回あるビギナーズ・ミーティングで毎回DVDを
鑑賞させられるだけでなく、ビギナーズ・ミーティングが終わってから通常のプロ
グラムに入っても様々なミーティングが毎日行われるらしく、そのほとんどでDVD
鑑賞があるらしい。俺が「よくそんなにビデオが揃っているもんですねえ。」と嫌
味を込めて言うと、デブは「なにビデオは5本程度のもので、それを取っ換え引っ
換えして見せているだけだよ。」と先輩面して言ったが、威張れた面ではない。
それに直視できる面でもない。俺たちの会話にまたしてもブラックが割って入って
きた。どうやら眠ることもできないくらい暇みたいだ。「どのビデオも似たり寄っ
たりで、出演者もどれも一緒だぜ。俺なんかどのビデオも5回以上は見ているん
だぜ。」と自慢げに言ったが、こちらも自慢できた話ではない。そこへ珍しくブチ
が話に入ってきた。いつもカーテンが閉めてあっているかいないかわからないブチ
が、今はいたわけだ。ブチは片手でカーテンを開け顔を見せた。直視できるくらい
のいわゆるイケメンだ。片手には本を開いたまま持っていた。寝ながら読んでいた
のだろう。「この病院の患者がいつも入れ替り立ち替りなのだから、同じDVDを繰
り返し見せられるのは仕方ないでしょうね。」ブチは話ながら半身を起こし話を続
けた。ベッドの上には本が置かれてあった。参考書のようだった。