院内の年寄りたち(1)

「ボクは、あの20分のDVDは本当に無駄な時間だと思いますね。看護師達がサ

 ボっているとしか見えませんよ。DVDだって古い映像でしょう。何十年も前か

 ら使っているんでしょうね。あの女の子なんて今ではボクよりずっと年上です

 よ。考えられないですよ。こんな旧態依然としたミーティングを繰り返しても

 仕方がないと思うのですがね。」ブチはかなり不満が溜まっているようだ。当

然だ。精神病院の中で満足しているヤツなんていないだろう。ましてはブチはま

だ若い。ただこの病棟の中では、ブチのように不満を膨らませているタイプと、

デブのように諦めていくタイプの二方向に偏っていくのだろう。俺は勿論前者の

タイプだ。だからブチには少なからずの好感が持てた。

 院内には圧倒的に年寄りが多い。俺の言う年寄りとは・・・そう、70歳代以

上だ。60代は大酒飲んでアル中になるような輩だけあってまだまだ若い。だが

年寄りと言っても一括りにはできない。一日中ほとんど動かないで物静かに過ご

している年寄りから、元気溌剌で存在感を誇示している年寄りまでいろいろだ。

ブラックが言っていたが、いつでも退院できる年寄りもけっこういるが、家族が

受け入れない者も少なくないそうだ。見舞いすら来ない家族も多いようだ。見舞

いには来るが、その目的は小遣い目当ての家族もいるらしい。人生の末路を垣間

見るようでちょっと切ない。明日は我が身か?

  

     *これはフィクションです