初心者ミーティング(2)
俺はミーティングでぎろんをする気満々で入った。20人位で満席になろうかと
いう6ヶの名が机で囲んだ部屋に10人位は集まっていた。その顔ぶれはどうみて
もビギナーズ(初心者)なんて面構えの面々ではない。むしろ《終活クラブ》とい
う雰囲気が漂っていた。だって仕方がない。みんな顔に(なんでオレはこんな所に
いるんだ!)という失望感で表われている。そんな俺だってそんな顔をしているの
だろう。まだ《終活クラブ》の方がみなさん活気に満ちているのだろう。
会場の前方ホワイトボード前の席に座っている看護師2人が、じっと俺を見てい
た。「空いている席へどうぞ。」という言葉とは裏腹の選択肢の限られた空席の中
から決められた方へ促され俺は座った。
俺は初めてのクラス替え、あるいは初めて会った人たちの面々を見るような緊張
感とはまた次元が異なる違和感を憶えた。俺はいつもそうだが、決められた時間に
遅れはしないが早く行って待つこともしない。看護師の1人が俺を笑顔の底で鋭く
睨むと口を開いた。「今日は新しい患者さんが参加されましたので、初めにこのビ
ギナーズ・ミーティングについて簡単に説明します。「ここでのミーティングは
毎回出されるテーマについて議論するのではなく、各自が思うことや考えること
を1人ずつ順番に話をします。他の人はそれを聞くだけです。他の人の話を聞い
て自分のことを考える時間が、みなさんにとってとても大切な時間になるでしょ
う。」議論するのではないと聞いた俺は、なんだかガッカリした。