楽器の値段とは?例えばヴァイオリン。


(いじられキャラのライヴィッチです。最近女子中学生からミヒャエルて呼ばれています)
 山ちゃんはよく「楽器って高いのでしょうね?」と訊かれて困る事があるそうだ。何が困るって、高いか安いかはその人の価値観だから評価が難しいのだそうだ。それでもフルートでよかったと言っている。なぜなら、例えばヴァイオリンを購入するとする。
 ストラディヴァリという有名な名器があるがそれは何億円もするので手が出せる話ではない。弦楽器をしている人は絶対に楽器の値段を言わないので皆目見当がつかない。これは人から聞いた話なので噂の域をでない事を承知していただきたい。ある中学生の医者の息子は何千万もする楽器を2挺持っているとか、優秀な高校生を持つ方が、予算2000万の楽器を探しているとか思うとプロの人は何千万円は普通なのかもしれない。これも予想の域を出ない話だ。
 これは実際にありそうな話だ。ある息子のお父さん清水の舞台から飛び降りる覚悟でヴァイオリンを買いに行ったそうだ。予算は50万円、決死の覚悟の買い物だった。楽器店でヴァイオリンが並んでいる。30万60万80万120万と並んでいた。30万のヴァイオリンはさすがに音がよくない気がした。弾くだけならと思い息子に60万、80万、120万のヴァイオリンを試奏させた。120万はさすがに音が違うような気がした。60万と80万は違いがわからなかった。弾いている息子に訊いてもわからないという。
ちょっと予算オーバーだが60万でいいかと決心して60万円の中から選んだ。1860年頃のけっこういいヴァイオリンが見つかった。古いヴァイオリンが高いとは限らないのだと思った。「ではこれにしてください」と言うと店員が「かしこまりました。では弓はいかがいたしましょうか?」と言う。お父さんはビックリした。『弓は別売りか〜?!』なんと弓もピンからキリまである。「そのヴァイオリンでしたら、このくらいの弓からお選びになられたらいいのでは」と持ってきた3本の弓の値段が15万、25万、35万だった。『ガ〜ン!弓ってこんなに高いのか〜!』不思議な事に同じヴァイオリンなのに弓で音が全然違うのだ。結局25万の弓を購入する事になった。お父さんは50万の予算がなんと85万になってしまって、今さら30万のヴァイオリンにしろとも言えなくてショックを受けていた。憔悴しているお父さんに店員はさらに追い打ちを与えた。「弓の毛はいかがしましょう? 」お父さん『毛がないと弾けないだろうが!』と思いながら「普通のでお願いします」これが8000円だった。さらに店員「弦はどのタイプのになさいますか?」お父さん『弦がないと弾けないだろうが!』と思いながら中ほどの弦をお願いした。4弦と替えの4弦合わせて約20000円だった。さらに店員「ケースはどのタイプを?」お父さん『ケースがないと持って帰れんだろうが!』と思いながらもうやけになってかっこいいケースを購入した。50000円だった。さらに湿気を嫌うからとケースに入れる防湿剤2000円と雨に濡れたらいけないとケース用合羽2000円、しめて93万2000円プラス消費税をお父さんは泣く泣く支払ったのだった。その時の気持ちをこう語っている。「決死の覚悟で清水の舞台から飛び降りたと思ったら、店員がさらに奈落の底を深く掘っていたので死にそうだった。」これがヴァイオリンの世界なのである。