アンナの部屋で(4)


(どこでも僕の部屋になるんだよ)
 今度はキアーラがアンナに訊いた。
「アン、そういえばあなた、結局ストラドにアマティのヴァイオリンをしばらく使いたいと言ってたわね?」
「ええ、私の次のヴァイオリンが仕上がるまで、アマティを使いたいとお願いしたわ。」
「でもアンは、今まで使っていたストラドの楽器の方がいいと言ってたじゃない。」
「ええ、その通りよ。でも思う事があってアマティを試したくなったの。」
 今度はパオラが訊いた。
「思う事って何かしら?ねえキャラ。」
 アンナは腰掛けていたベッドから立ち上がって、机の上にあった楽器ケースからヴァイオリンを取りだすと、それをキアーラに渡しながら真面目な顔をして言った。
「キャラお願い。これを少し弾いてみて。」
 椅子から立ち上がったキアーラはそれを受け取ると弾き始めた、がすぐに弓を止めた。
「こ、これは・・・」
小さく囁くと、改めて弓を構え直して真剣に弾き始めた。
 アンナもパオラも口を挿めないくらい、キアーラの表情は殺気だっていた。時間にして5分程度だろう。しかし二人には随分と長く感じられた。