アンナの部屋で(3)


(ここは僕の部屋だよ)
 パオラがアンナの思索の時間を破った。
「ストラドにプレーテ・ロッソがウィーンへ行くと言ったそうよ。それでストラドは何をしたと思う?なんとヴァイオリンの設計図をプレーテ・ロッソに預けたそうよ。」
「どうして設計図を?」
アンナが訊いた。
「プレーテ・ロッソの活動に役立てればと彼は言ってたけど、結局は自分のヴァイオリンを売り込む魂胆みたいよ。その設計図さえあれば、多くのヴァイオリン職人がストラドのような良質なヴァイオリンを作る事ができるようになるんだってさ。ストラドってすご〜い自信家よねえ。」
「だって本当に素晴らしいヴァイオリンを作っているんですもの。でも設計図から技術だけを盗まれる事にならないのかしら?」
「同じ事をキャラが訊いたのよ。ストラドは盗まれない切り札を持っているのだってよん。」
「それが秘密のニスなのね。」
「アンったらキャラと同じ事を言うのね。その通りよ。それでアンは秘密のニスの秘密がわかったのかしら?」
「まだわからないけど・・・」
「けど、なあに?」
「う〜ん、もしかしたらと思っている物があるの。もうちょっと時間を頂戴。」
「それが本当にそうだったら凄い事だわ。わかったら私にこっそり教えてよね。だってストラドにバッソンを作ってもらいたいんだもん。」
パオラが笑いながらアンナに言った。