モーツァルトの協奏曲の会とは?


(ルナピンスキーの楽しいお散歩の会だよん❤)
 ある日、アヒレス先生が山ちゃんに言ったそうだ。
「今度隣の広いレッスン室で『モーツァルトの集い』 をするので来てからト長調ニ長調の協奏曲を吹く ように。」と。山ちゃんは詳細を理解できないままに指定された日時に隣の広いレッスン室に出向いた。
広さはちょっとした会議場くらいあるオーボエの教室だ。なぜそんなに広いのかと言うと、そこは有名なオーボエ奏者であり教育家であるヴィンシャーマンの使っていた部屋だからだ。わがアヒレス先生のレッスン室はその半分だが部屋にはグランドピアノとチェンバロが置いてあっても狭く感じないほどの広さなので十分なのだが、さすがにアヒレス門下生25名ばかり集まって演奏を聴くには狭い。逆に言うとオーボエレッスン室はそれだけ広いという事だ。
 さて、その広いオーボエレッスン室に集まったクラスメイトたちは、それぞれが部屋の好きな所へ立ったり、窓辺へすがったり座ったりしている。中には椅子を持ってきて座る者もいたが、反対に座っているので背もたれがいい具合の腕置きになっている。ようするにみんな気ままに自由にしている。そこへアヒレス先生が日本人ピアノ留学生を連れてやって来た。そこで先生が言った。「彼がピアノ伴奏してくれるので、誰 からでもいいからト長調ニ長調の協奏曲の第1楽 章を演奏するように!」そうなのだ。モーツァルトの集いとは、先生を含めたクラスメイトの前でピアノ伴奏付きでモーツァルトの協奏曲を演奏する集会だったのだ。なんでも早めに済ませておきたい山ちゃんだったが、今回だけはまず様子を見ておく事にした。こんな時ドイツ人たちは遠慮しない。すぐに一人の女子学生が演奏を始めた。あまり上手ではなかった。そしてその学生の演奏が終わると、山ちゃんはビックリするような場面に遭遇した。