モーツァルトの会とは言いたい放題の会!?


(ライヴィッチもやりたい放題!)
 山ちゃんが留学した先、ドイツ(その頃は西ドイツ だった)のデトモルト音楽大学の中に木管楽器棟という建物がある。そこには木管楽器の教授陣のレッスン部屋がある。その広さはまちまちだ。レッスン部屋の広さが教授の偉さなのだろうか?答えは半分当たっており半分違う。オーボエ教室は大変広い。なぜならヴィンシャーマンというドイツを代表する素晴らしい教授がいたからなのだ。彼は多くのオーケストラ演奏者を輩出したのだ。そして山ちゃんがいた頃は後任のシマルフスが使っていたという訳だ。ちなみに山ちゃんの先生であるアヒレスの部屋もけっこう広い。それはマイゼンというドイツを代表する演奏家であり指導者の部屋だったからで、アヒレス先生はマイゼン先生の後任でデトモルトへ来たのだった。
 さて一番広いオーボエのレッスン部屋で行われた
モーツァルトの会』は、アヒレス先生を含め約25名の弟子のほぼ全員が集まり、2曲あるモーツァルトのフルート協奏曲の1曲の第1楽章を順々に吹いていくという会だったのだ。一番目のドイツ人女学生が演奏した後、みんなが意見を言い合っている。アヒレス先生はほとんど何も言わないでニコニコしている。山ちゃんと同じ新入生ですらいろいろと発言していた。
「高音の音が汚い!」とか「テンポが揺れすぎている。」とか「モーツァルトにしてはヴィブラートが激 しくロマン派みたいだ!」とかけっこう辛辣な意見が続く。日本では考えられない光景だった。おそらく日本だといい所を言うのではなかろうか?あるいは、「私には難しいのですが・・・」と前置きして発言するのではないだろうか・・・と、山ちゃんは思いながらその光景を見ていた。特にヘタクソな奴が偉そうにいろいろと言っているのを見るにいたっては、「それじゃあ、お前が吹いてみい!」と日本語の山口弁で呟いた。そんなわけで、小心者山ちゃんの初めて経験した『モーツァルトの協奏曲の会』は、動揺した演奏になってしまったようだ。そしてみんなから散々な事を言われたらしい。