大学内発表会でモーツァルトを吹く


(う〜ん、卒業の選曲は難しい・・・)
 山ちゃんは、どうしても吹きたい曲があった。それはモーツァルトの名曲、『フルート四重奏曲ニ長調』だった。古典派は数が少なく、選曲が難航される事が予感できたし、とにかくこの曲は名曲でもあり、これでノルマであるアンサンブルも兼ねられる。ちなみにフルート四重奏とは4つのフルートで演奏するのではない。ピアノ4重奏がピアノ4台で演奏するのではない理屈と一緒だ。フルート四重奏もピアノ四重奏も相棒は同じで、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと一緒に演奏するのだ。
 山ちゃんはこの頃ちょうどモーツァルトのフルート四重奏ニ長調をしていて大学内の発表会で演奏する予定だった。これでうまくいったらそのまま卒業試験で使えるのだ。山ちゃんは頑張って練習した。
 さて、学内発表会で山ちゃんと仲間はモーツァルトを演奏した。出来はまあまあだったと記憶している。もちろん師匠のアヒレス教授も見に来ていた。演奏後アヒレス先生は山ちゃんに「どうだった?」と訊いた。山ちゃんは「まあまあだった」と答えた。すると先生は「モーツァルトは誰でも知っている。まあまあではいけない」と言った。結果、モーツァルトは選曲から外す事になった。モーツァルトを外されたのも残念だったがなにより困ったのが、アンサンブルを早く決めないと、なかなかいいメンバーを集めるのは大変なのだ。山ちゃんは誰かいい人がいないかなあと考える毎日であった。