俺は本当に肝硬変?(1)
俺は部屋に戻ってからその不安を口にすると、ブラックはさももっともらしく俺
に言った。「ここは精神病院だぜ。医者だって専門医ではないだろう。もしお前さ
んが病気を本気で治したいのならここを出ていくべきだな。ここに居ると死んで
しまうぞ。」確かにブラックの言うことは間違ってはいなかった。事実、俺の隣
で食事をしていたおじいちゃんは癌になって病院を出ていった。他にも昨日まで元
気そうだったおじいちゃんが今日は車椅子に乗せられて、食事も一人ではままなら
なくなっていた姿をこの目で見ている。俺の不安はより増長されていった。そこへ
デブが一言「あんたも早く退院したけりゃ、この病院ではおとなしくしておくんだ
な。」と吐き捨てた。俺は開いた口が塞がらなかった。ここは病院ではないのか?
まるで監獄の中の囚人と話してるみたいではないか。
その夜俺は眠れなかった。疑心暗鬼が闇夜の不気味な壁の中から飛び出てきそう
な錯覚に何度も襲われた。(俺は本当に肝硬変だったのだろうか?主治医がいつも
頼もしい笑顔で接してくれているのは憐れみの裏の顔なのだろうか?そういえば
この病院へ来て2週間以上も経つのに主治医の診察はほとんどない。時々先生が
やってきては腹や足を触診し、俺の顔色や目を見て笑顔で部屋を出ていくだけで
治療らしいことといえば、毎食後服用される大量の薬だけだ。ここへ来てまだ数
週間なのに自宅へいた頃が遠い昔のように感じる。俺は本当に肝硬変なのだろう
か?)俺は気が狂いそうだった。朝の光が待ち遠しかった。俺はスーッとカーテ
ンを開けた。外はまだ闇の中だった。
*これはフィクションです