朝からDVD鑑賞会?(2)
俺はDVDの映像を見ながら、自分は現実にアル中豚舎の中に押し入れられてし
まったのだと認めながらも、この状況をなんとかしたいという抗う自分の感情を
どのように言葉で表現できるのか心の中で模索していた。
さて、映像の中の父親はとうとう娘の貯金箱にまで手を出し酒を買いに行く。
毎晩のように繰り返される夜の修羅場から、なんとか抜け出そうと夫婦は揃って
アル中の専門の精神科へ出掛ける。父親は度々の飲酒要求と闘いながら、やがて
家庭へ戻り、みんなの笑顔が戻るというストーリーだ。
俺は意外に真剣に見ているみんなの様子とテレビ画面を交互に観察しながら、
ボ~と考えながらボ~室内の冷めた空気を感じていた。それでもテレビの内容は
頭に入ってくるが心には響かない。それどころか陳腐で退屈なテレビ画面は僕を
別の画面背景の世界へ引き連れてくれた。例えばこんな世界だ。
(今頃こんな社宅のような狭いアパートに小学生の娘と3人で住んでいる家族を
モデルにしたドラマはなかろう。)とか、(あっ、俺が小学生の頃にあった炊
飯ジャーだいつも温かいご飯が食べられとる売り文句だが、一晩経つと変な臭
いがして美味しくなかったなあ。)とかだ。また昼の公演の場面では、父親が
ブランコに腰掛けて躊躇しながらも缶ビールをグビッと飲んでいる。俺は一瞬背
景に映ったコリー犬と散歩している人を見逃さなかった。(今どきコリー犬なん
て見かけないよなあ。本当に古い映像だなあ。)などなど、俺はあれこれ別の
鑑賞をしているうちに約20分のDVD鑑賞会は終わった。